タイトル未定

友達や家族に共有できないけれど誰かに言いたいことを少しずつ書いていきたいです。

リアルな感覚として伝わってくる、朝帰りの朝のあれこれ【残ってる/吉澤嘉代子】

吉澤嘉代子ちゃんの「残ってる」がとうとう、10月4日に発売されますね…!!


この曲を初めて耳にしたのは、昨年11月に参加した東京キネマ倶楽部でのライブ。

一緒に観に行った人がお手洗いに行って、なんとなく居心地悪く一人でいた時に流れ出したイントロ。

少しずつ下がっていくこの感じ、多分好きな感じのやつだ…と思いながら集中して聴いたのを覚えている。

まだ、彼女のことを好きになってからそんなに時間経っていなかったので、この曲はどのアルバムに入っているのかなと調べて、未発表曲であることを知った。

それから一年弱、やっと音源化されることが決まって大興奮しているここ最近です。


昨日MVも公開されたし、とりあえずまず一度聞いてみてほしい。


https://youtu.be/6Rp4xvOzHUI

 

私は未だかつて、こんなに完璧な朝帰りソングを聞いたことがなかった。(ドリカムのうれしはずかし朝帰り世代ではないし)

朝帰りあるあるを彼女の感性で捉えて歌詞にメロディーにするとこんなにノスタルジックな曲になるのね…。

言いたいことはいくつもあるのだけど、うまく出てこないので、とりあえず歌詞についてだけ思いつく限りつらつらと。



『改札はよそよそしい顔で 朝帰りを責められた気がした』

まずこの出だしのワンフレーズで毎回心を掴まれてしまう。
朝帰りって、つまりは誰かの家に泊まった次の日の朝ってことなだけのはずなんだけど、この単語が入るだけで、急に色んな記憶がぶわっと思い浮かんでくる。

『私は夕べの服のままで 浮かれたワンピースがまぶしい』

可愛らしい柄のワンピースに、好きな人とのデートに心を躍らせていた前日の自分の姿(今日はどれ着て行こうかな、気合い入れすぎるとダサいかな、でも出来れば可愛いって思ってほしい…なんて思いながら服選びするのってたまにだと楽しい)が重なって、そんな自分を、彼と一夜を過ごしてぼうっとしている自分が第三者的に見ている感じ。
朝帰りの日の朝って、表面上はいつもと変わらず普通なんだけど、内心は昨日の余韻を噛み締めたりこれからどうなるんだろうと考えてみたりで忙しくありませんか??私は忙しいんですけど。
そんな時って、なんとなくぼうっとした感覚になる。
Aメロが終わった時点で、強制的に思い出回想モードに引きずり込まれてしまっていることに気がつく(毎回)

『風邪をひきそうな空 一夜にして 街は季節を越えたらしい』

風邪を引きそうな、の一文が入ることで、夏と秋が行ったり来たりしている季節の境目が思い出される。
ああもう夏も終わりかと、少し冷たくなった空気で感じる。よく分からないけど切ないあの感じ。
夏から秋に変わる時だけ切ない気持ちになるのってどうしてなんでしょうね。

『まだ あなたが残ってる からだの奥に残ってる ここもここもどこかしこも あなただらけ』

さっき、冷たくなった風を感じたからこそ、よりこのフレーズが熱を持って響いてくる。
なんだろう、わたしにとって誰かが自分の中に残るってことは、熱いって感覚と繋がっているんですよね。全然違う感覚と繋がっている人もいると思うんだけど。
表面的に触れ合う以上の何かを一夜を通して得て、それが体の奥の熱として残っているんだろうなと伝わり、自分の経験と合わさってこちらの体まで温まってくるようなフレーズ。
それプラス、全身多幸感でいっぱいになっているんだなというのが、「ここも」以下の一文から、これまたリアルな感覚として伝わってくる。
ストレートに表現されないことで逆にリアルに伝わるのってすごい。

『でも 忙しい朝が 連れて行っちゃうの いかないで いかないで いかないで いかないで 私まだ 昨日を生きていたい』

表面上いつもと変わらない自分で、きっといつもと変わらないであろう混雑した電車に乗ることで、日々の普通に引きずられて特別な感覚が消えてしまう。
特別な夜の特別な感覚が薄れちゃうのが勿体無いなって、これ朝帰りの時に限らずよくライブの帰り道に感じます。
お昼の思い出はあんまり薄れる感じがしないんだけど、夜はやっぱり感情的に特別に思う出来事が多くなるからこう感じるのかな。
歌詞とずれちゃうんだけど、この「いかないで」を繰り返すたびに、歌声も少しずつ強くなっていって、そこにまたぐっと来る。
「昨日を生きていたい」ってフレーズも、日本語的には不思議なものなのに、自然と自分の中におさまって、残る。
多分、この言葉が表す気持ちを、生きてきた中のどこかで感じてきたんだろうなと、また思い出が静かに立ち上ってくる感じがする。


一番を書いただけで相当な文量になってしまったので、二番は少しだけにしておこうと思う…。


『まだ 耳に残ってる ざらざらした声 ずっとずっとちかくで 聞いてみたかったんだ』

個人的にこの歌詞がこの曲で一番お気に入り。全部大好きなんだけれども!
そもそも、声ってざらついて聞こえるものじゃないと思うんです。
というか、声自体がこういう触覚を伴って感じられるものじゃないと思うんですよ。
そう感じられるのって、音が近くで耳に響く時じゃないかと。
耳元で、あんまり大きくない小さめの声で話しているのが耳に入ってくるからこそ、ざらざらとした感覚として感じられるんじゃないかな?と!!
どのフレーズも、リアルな感覚として自分の中に入ってくるんだけれども、その中でも断トツでこれがリアルだった。
「ずっとずっとちかくで 聞いてみたかったんだ」の一文がなくても、鮮明にそのシーンが思い浮かべられる、表現力ここに極まれりな歌詞だなと思いました。

『ああ首筋につけた キスがじんわり』

最後に出てくるこのフレーズで、この曲の主人公と熱を共有できた感じがして嬉しくなる。

『秋風が街に 馴染んでゆく中で 私まだ昨日を生きていた』

表面的にはいつもの朝を過ごしているようで実は、心ここにあらずの状態で昨日の様々に想いを馳せている私、がこの一文に詰まっていると思う。
「私まだ 昨日を生きていた」だけでも充分伝わってくるのにも関わらず、「秋風が街に 馴染んでいく中で」の一行よ。
終わりかけていた夏の暑さとともに、自分の中に残ってる特別な熱さがより強調されて感じられるこの感じ!!すごい〜すごいんだよな〜終わりまで抜かりなく完璧なんだよな〜〜


吉澤嘉代子ちゃん(年上の方なんだけれどもちゃん付けのイメージ)は、いつも歌詞を書くときに、ひらがなカタカナ漢字のバランスをとても大切に考えるんだそう。
(なので、私もそれにならって昨日ご本人がtwitterに載せていた歌詞の表記で引用しました。)
そんなエピソードを目にしたり、彼女の歌詞を見たりする度に、言葉をとても大切にしている姿勢が伝わってきて、そこがとても好き。
言葉を大切にしているからこそ、歌い方にもそれが出るし、歌詞の感情に相応しいメロディーがくっつくんじゃないかなと思ったりしている。
大好きなシンガーソングライターさんです。

来月の5日にミニライブとサイン会に参加するので今からワクワクしています。
涼しくなった秋の始まりの夜に、この曲はどういう風に映えるかな。